昨日と今日で値が違うとき:同じ条件で測定する方法
- 8月5日
- 読了時間: 10分
「昨日は42だったのに今日は38です」
測定を始めたチームでは、2〜3週間ほど経つと必ずこの質問が出ます。先週ジャンプ高が42cmだった選手が、今日は38cmでした。コンディションが落ちたのでしょうか、それとも測定が間違っていたのでしょうか。
この質問に答えられないと、データは力を失います。数値が下がっても「あの日は調子が悪かったのだろう」で流し、上がっても「たまたま良かっただけ」で済ませるようになります。そうなると、どれだけ測定してもトレーニングは変わりません。
数値を信じるには、まずばらつきの大きさを知る必要があります。4cmの差がその選手にとってよくある幅なら、それは信号ではなくノイズです。逆にその選手が普段1cm以内で推移しているなら、4cmは確かな変化です。この区別は統計の知識ではなく、測定の習慣から生まれます。
ひと目で分かる要点 値がばらつく原因は、機器よりも測定条件であることがほとんどです センサーの装着位置・測定する時間帯・順序・ウォームアップ・動作の種類を固定すると、ばらつきは大きく減ります 試技を複数回行い**変動係数(CV)**を見れば、その日の測定を信じてよいかがすぐ分かります 一回の値ではなく推移で判断し、選手ごとに自分の基準値と比較します 測定プログラムを作って割り当てておけば、担当コーチが変わっても同じ手順で測定されます
値がばらつくのは、たいてい条件のせいです
人の体は一日の中でも変化します。朝と夕方で違い、トレーニング前と後で違い、前夜よく眠れたかどうかでも変わります。ここまではコーチにはどうにもできない部分です。
問題は、その上に測定条件まで毎回変わる場合です。先週はトレーニング前に測定したのに今週はトレーニング後、前回はウォームアップを十分にしたのに今回はすぐ開始、センサーを留めた位置も少し違っていた——こうなると、出てきた数値からコンディションの変化だけを取り出すのは難しくなります。
コーチが管理できるのは後者です。条件を固定すれば、残った差は選手の実際の変化に近づきます。次の5つを決めておくだけで、ほとんどは解決します。
条件1. センサーを同じ位置にしっかりと
測定精度の前提は、センサーが揺れたり滑ったりしないことです。装着が緩いと、選手の動きではなくセンサー自体の揺れが混ざります。ストラップは毎回同じ強さで締めてください。
装着位置は測定ごとに異なります。ジャンプと反応筋力指数(RSI)は、シューズの甲にストラップで固定します。片脚で跳ぶ種類も位置は同じで、跳ぶ側の甲に留めます。1RMとウエイトリフティングはバーベルに装着します。速度ベーストレーニング(VBT)は行う種目によって分かれ、バーベル種目はバーベル、ダンベルとケトルベルは手首、自重種目は体幹、ケーブルとマシンはウエイトスタックです。スイングと投擲は手首に装着し、アイソメトリックは姿勢に応じて体幹または太ももに装着します。アプリでもウェブでも、測定を選ぶとその測定の装着位置を画面で案内するので、迷ったらそこで確認できます。
ここでよく見落とされるのが、同じ測定なのに位置を変えてしまうケースです。たとえばバーベルを落とす動作なのでセンサーを守るために手首へ移すことがありますが、アプリでもこの場合は精度がやや低くなる可能性があると案内しています。変える事情があるなら変えて構いませんが、その選手のその測定はその後も同じ位置で続けてください。先月のバーベル記録と今月の手首記録を並べて「遅くなった」と判断してはいけません。
回転測定も同様です。装着位置が回転中心から遠いほど、線速度は大きく測定されます。同じ選手を2か月にわたって比較するなら、装着部位は最初に決めたとおりに保つ必要があります。
条件2. 測定する時間帯と順序を決めておく
トレーニング前に測定したジャンプと、トレーニング後に測定したジャンプは同じ指標ではありません。どちらにも意味はありますが、混ぜてはいけません。チームごとに「ジャンプ・RSIは火曜のトレーニング開始前」「速度ベーストレーニングはメインセット中」のように決めておきます。
順序も値に影響します。最大筋力の測定を先に行ってからジャンプを測ると、ジャンプは低く出ます。複数の測定を一度に行うときは、爆発力中心の測定を前に、疲労が蓄積する測定を後に置く順序をチームのルールとして固めてください。
週単位の曜日まで揃えるとさらに良くなります。月曜は週末の休養明けで良い値が出やすく、木曜は週中のトレーニングが積み重なって低く出るのが自然ですが、これを交互に測定すると、ありもしない上下動が作られます。
条件3. ウォームアップを毎回同じに
測定直前のウォームアップは結果を大きく変えます。特にジャンプ・RSIのように瞬間的な力を使う測定は、準備の程度に敏感です。「軽く体をほぐしてから開始」は人によって解釈が変わります。
そこで、ウォームアップを文章として書き残すことをおすすめします。どの動作を何回、何分行い、何分休んでから測定開始なのかまでです。チームにコーチが複数いる場合は特に重要です。コーチAの準備運動とコーチBの準備運動が違えば、選手の値がコーチによって変わってしまいます。
条件4. 動作を同じやり方で
同じ「ジャンプ」でも、反動を使うか、腕を振るか、しゃがむ深さがどこまでかによって違う値が出ます。そのためアプリとウェブでは、反動ジャンプ・スクワットジャンプ・アバラコフ(腕振りジャンプ)・デプスジャンプをそれぞれ別の種類として分け、各種目の跳び方を画面で案内しています。反応筋力指数も連続ジャンプ・ドロップジャンプ・片脚ジャンプに分かれます。選手が種類を混ぜて跳ばないよう、毎回同じ種類を選んでください。
ボックスから下りるジャンプのように設定値がある測定は、その値も固定する必要があります。ボックス高が30cmから40cmに変われば接地時間が変わり、RSIも変わります。体重やメディシンボールの重量を入力する測定も同じで、値が変われば結果の解釈も変わります。
動作が小さすぎると、そもそも1回として検出されないことがあります。レップが抜けるようなら、選手が動作範囲を十分に使えているか、センサーが所定の位置にしっかり装着されているかをまず確認してください。
条件5. センサーの状態を整える
センサーは正確な測定のためにキャリブレーション(補正)が必要です。幸い、コーチが計算することはありません。必要なタイミングになるとアプリとウェブが知らせてくれるので、画面の案内どおりに進めれば大丈夫です。ジャイロの補正はセンサーを平らな場所に静止させておけばよく、加速度計の補正は案内に合わせてセンサーを面ごとに置き換えます。
ジャンプ測定には、カウントダウンの間じっと立っている段階が含まれます。このとき動くと基準がぶれるので、選手には「カウントが終わるまで動かない」と伝えてください。可動性測定は角度計の画面で基準姿勢を取ってゼロ点を設定しますが、この基準姿勢も毎回同じでなければ左右差や推移を比較できません。
キャリブレーションを促す案内は、センサーの状態を見て表示されます。最後の補正から時間がかなり経っている、温度が大きく変わった、セットを終えた後に値が少しずつずれているのを検出した、といったときです。案内が出たら流さず、その場で対応してください。次のセットから値が安定します。
ばらつきの大きさを数値で確認する
条件をすべて揃えても、値はある程度ばらつきます。大切なのは、その幅を知っておくことです。
いちばん簡単な方法は、一度だけ測定しないことです。ジャンプやRSI、投擲のように複数回試技する測定は3〜5回行い、試技ごとの値がどれだけ散らばったかを見ます。PoinT GOはこれを**変動係数(CV)**として自動計算し、結果画面に表示します。試技ごとの値が平均からどれだけ離れたかを百分率で表した値で、低いほどその日の測定が安定していたという意味です。画面では色と等級で表示されるので、計算しなくてもそのまま読み取れます。
この数値は2通りに使えます。
1つ目は、その日のデータを信じてよいかの判断です。 試技間のばらつきが大きく出たなら、その日の最高値は根拠として弱いものです。条件を点検し直して再測定するほうが確実です。多くの場合、センサーが緩んでいた、ウォームアップが足りなかった、選手が動作を毎回違うやり方でしていた、のいずれかです。
2つ目は、選手の一貫性そのものを指標として見ることです。 条件をきちんと揃えても試技ごとのばらつきが大きいままの選手は、動作がまだ安定していない状態です。最高値だけを見ていては気づけない問題ですが、試合では平均に近いパフォーマンスが出るので、トレーニングで手を入れる余地があるということです。
本当の変化と測定のばらつきを見分ける
最初の質問に戻ります。42cmから38cmに下がったのは、意味のある変化でしょうか。
一回の測定だけで判断しないのが原則です。判断は次の3つを合わせて行います。
見るもの | 確認方法 | 判断 |
その日の測定が安定していたか | 試技ごとのばらつき(CV) | ばらつきが大きければその日の値自体を保留 |
この選手の普段の幅はどのくらいか | ここ数週間の記録範囲 | 普段の幅の中ならノイズに近い |
方向が続いているか | 推移チャート | 2〜3回続けて同じ方向なら実際の変化 |
大切なのは、基準が選手ごとに違うということです。普段から3〜4cm動く選手もいれば、1cm以内で収まる選手もいます。チーム平均や他人の記録ではなく、その選手自身の記録範囲と比較してこそ判断が合います。だからこそシーズン初めに数週間かけて繰り返し測定し、各自の基準値と普段のばらつき幅を作っておくことが重要です。
ウェブのダッシュボードでは選手ごとの推移をチャートで見られるので、今日の値がその選手の普段の範囲の内側か外側かがひと目で分かります。点ひとつではなく線を見る習慣が、判断を正確にします。
チーム測定プロトコルを1枚にまとめる
ここまでの内容をチームのルールに移すと、次のように整理できます。測定の種類ごとに1行ずつ書いて壁に貼るか、チームの文書として共有してください。
項目 | 決めておく内容 |
測定の種類 | 反動ジャンプ・連続ジャンプなど正確な種類ひとつ |
センサー位置 | 装着部位とストラップの種類 |
時点 | 曜日・時間帯・トレーニング前後 |
順序 | 複数の測定を行うときの実施順 |
ウォームアップ | 動作・回数・待ち時間まで |
設定値 | ボックス高、目標回数、体重・重量の入力値 |
試技回数 | 何回測定し、何を記録するか |
一度決めたらシーズン中は変えないほうがよいです。プロトコルを変える必要があるなら、変えた日付を残してください。その前後の記録を続けて比較してはいけないからです。
プロトコルをチームに定着させる方法
ルールを決めても、人が記憶で守っていては結局崩れます。コーチが複数いたり、選手が20人を超えたりすればなおさらです。
PoinT GOでは、測定の構成をトレーニングプログラムとして作り、選手に割り当てられます。どの測定をどの設定で行うか——ボックス高や目標回数まで——プログラムに入れておけば、毎回はじめから選ばずに割り当てどおり実行されます。担当コーチが変わっても同じ手順で測定されます。
測定する道具が違っても基準がずれないことも重要です。現場ではアプリで測定し、オフィスではウェブで確認することになりますが、PoinT GOはアプリとウェブが同じ測定アルゴリズムを共有しています。どちらで測定したかによって指標の基準が変わらない、ということです。測定したデータはリアルタイムで同期されるので、ウェブでチーム全体の推移や選手比較を続けて見ることができます。
測定値を生み出す計算は、9軸IMU技術を最適化したPoinT GO独自のアルゴリズムが自動で処理します。コーチが気にする部分は条件を一定に保つこと、そこまでです。
今日すぐ試すこと
チームでいちばん頻繁に行う測定をひとつ選んでください。その測定のセンサー位置・時点・順序・ウォームアップ・設定値を1枚に書き出し、次の測定からそのとおりに守ってみてください。そして試技を3回以上行い、ばらつきがどのくらいかを確認してみてください。
2〜3週間これを続けるだけで、選手ごとに「この程度の差はいつもある幅」と「これは本当に変わった」の境目ができます。その境目ができた瞬間から、測定値がトレーニングを変えはじめます。



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