VBT測定ガイド:現場でバー速度を測り、読み解く
- 7 日前
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同じ80kgでも、昨日は軽かったのに今日はやけに重い日があります。よく眠れなかったり、前日のトレーニングが残っていたり、コンディションが落ちているときにそうなります。ところがトレーニング計画表には重量だけが書いてあります。今日の体の状態は重量には書かれていません。
VBT(速度ベーストレーニング)はこの空欄を埋めます。バーが挙がる速度をレップごとに測り、その日その重量が選手にとって実際にどれくらい重いのかを数字で示します。速度が普段より遅ければ疲労が溜まっている合図、速ければコンディションが良い合図です。このガイドでは、VBTでどんな値が出るのか、その値をどう読んでセットの最中にその場で判断を下すのかを扱います。
VBTを測るとどんな値が出るのか
バーにセンサーを付けて1セット行うと、レップ一つひとつが以下の値として残ります。目で「速いな/遅いな」と感覚で見ていたものを数字で受け取るわけです。
値 | 何を見るか |
平均速度 (m/s) | レップ全体の平均バー速度。その日その重量の強度を判断する基本指標です |
最高速度 (m/s) | レップ中で最も速い瞬間。どれだけ爆発的に押し出したかを見ます |
可動域 (ROM) | バーが移動した距離。レップごとに深さが一定かを確認します |
パワー | 速度と負荷を合わせて見た出力値。力強く速く挙げるほど大きくなります |
速度低下 (%) | セットが進むにつれ速度がどれだけ落ちたか。セット内疲労の核心的な合図です |
等級 | レップの品質を基準に照らして付けた段階 |
PoinT GOは9軸IMUウェアラブルセンサーでレップを自動的に捉え、独自に最適化したアルゴリズムがこれらの値を自ら算出します。どの信号でどう計算するかはPoinT GOが処理するので、コーチは出てきた数字をセット運用に使うことだけに集中すればよいのです。
一つ押さえておきたいことがあります。VBTが測るのはバーの速度と動きです。地面反力のような力(N)をフォースプレートのように直接測るわけではないので、パワーも動きをもとに出した出力値です。その代わり「この重量をどれだけ速く押したか」は非常に正確に捉えます。そこがVBTの強い点です。
速度ゾーンでトレーニング目的を分ける
VBTが便利な理由の一つは、平均速度を見るだけで今どんな能力をトレーニングしているのか見当がつくことです。バー速度とトレーニング目的の関係は、スポーツ科学で古くから整理されてきた内容です。
平均速度 | トレーニングの性格 |
速い(約1.3 m/s以上) | スピード中心。軽い重量で速く |
中間(約0.75〜1.3 m/s) | パワー・スピード筋力。爆発力を高める区間 |
遅い(約0.75 m/s未満) | 筋力中心。重い重量でゆっくり |
目標がパワーならパワー区間の速度が出る重量を、最大筋力ならより重くて遅い重量を選ぶという具合です。パーセント(1RMの80%のように)だけで決めると「昨日の1RM」に縛られますが、速度で選べば「今日の体」に合わせられます。上の表は大きく三つに分けたもので、PoinT GOは実際にレップごとにさらに細分化した速度区間(筋力・筋力スピード・パワー・スピード筋力・スピード)のどこに入ったかを表示してくれるので、今狙った強度でトレーニングできているかがすぐに確認できます。
PoinT GOでVBTを測定する
現場で測る流れはシンプルです。アプリ(connect)でもWeb(coach-web)でも手順は同じです。
センサー装着:使う器具によって付ける場所が変わります。バーベル種目(スクワット・ベンチ・デッドリフトなど)はバーベルカラーにマグネットで付け、ダンベル・ケトルベルは手首ストラップで手首に、ケーブル・マシンは重量スタックに、自重種目はロングボディストラップで胴体に装着します。ぐらつかないようにしっかり固定することが精度に重要です。
種目・重量設定:スクワット・ベンチのような種目を選び、セット重量を入力します。必要なら目標レップ数や目標速度区間のような任意設定を追加できます。
準備:「準備」を押すと短いカウントダウンの間じっとしています。この静止姿勢でセンサーが基準を取ります。
測定:バーを挙げるとレップが自動的に検出されます。画面には速度ゲージと速度低下バー、直前のレップの平均・最高速度・ROM・パワーがリアルタイムで表示されます。
保存:セットが終わると結果画面に移り、確認して保存すると選手の記録に残ります。
中途半端にぐらついた動作や範囲を外れた値は、PoinT GOが自動で除外します。有効なレップだけを結果に取るので、コーチが「これは外そう」と一つひとつ判断しなくても済みます。別途のキャリブレーション手順もありません。セットが終わった後に測定パターンが不安定だと判断されると、補正を勧める案内が出る程度です。
connectアプリで測れば、スマホ1台で現場からすぐ測定でき、複数の選手を回しながら測れます。
結果を読む方法
測定した値を読み取ることが本番です。VBTはいくつか押さえるだけでセット運用がぐっと変わります。
平均速度でその日の強度を見ます。 同じ重量なのに普段より平均速度が遅く出れば、その選手にとって今日その重量はより重いということです。疲労が溜まっているかコンディションが落ちている合図なので、重量を少し下げても構いません。逆に普段より速ければコンディションが良いので、少し上げてみることもできます。重量表ではなく今日の速度に合わせるのです。
速度低下でセットをいつ切るかを決めます。 セットを続けると速度がだんだん落ちます。この落ちた度合いがセット内に溜まった疲労です。速度がかなり落ちているのに「あと1レップだけ」を繰り返すと、疲労ばかり溜まって得るものは少なくなります。多くの研究は、パワー・筋力が目的のときは速度低下を低く、筋肥大が目的のときはもう少し許容する方を勧めています。PoinT GOはセット中の速度低下を段階で自動表示してくれるので、決めておいた線に達したら思い切ってセットを終えればよいのです。
推移で見ます。 VBTの本当の力は1セットではなく、数週間にわたる流れにあります。同じ速度区間で扱える重量が少しずつ増えていけば筋力が上がった証です。逆に同じ重量の平均速度が数週間ずっと落ちていくなら回復が足りない合図かもしれず、そういうときは睡眠やトレーニング量をコーチが一緒に見てあげるとよいでしょう。
1RMを直接測らずに推定します。 いくつかの重量で速度を測ると、重量と速度の間に一定の関係が現れます(負荷-速度プロファイル、LVP)。PoinT GOはこの関係で1RMを推定してくれます。重い最大挑戦を頻繁にしなくてよいので、けがのリスクが減ります。詳しい活用法は下の関連記事に続きます。
下ろす局面も見ます。 VBTは挙げる局面(動心性)だけでなく、下ろす局面(遠心性)も区別して見ます。下ろすときにどれだけコントロールして下ろしたかがレップ品質として出ます。急にストンと落とすより、制御しながら下ろす習慣をつけるときの参考になります。
信頼できるデータを得るには
速度値がぶれると解釈もぶれます。現場でこれだけ押さえてもデータはぐっと安定します。
すべてのレップを最大限速く押してください。 VBTで最も多い間違いが「楽に」挙げることです。軽い重量でも「最大限速く挙げる」という意図で行ってこそ、速度が実際の能力どおりに出ます。ゆるく挙げると強度を実際より低く捉えてしまいます。
センサーはいつも同じ場所に付けてください。 バーベルなら毎回同じ側のカラーなど同じ位置です。セットごとに位置が変わると速度の比較がずれます。
ウォームアップ後に測ってください。 体がほぐれていない状態の最初のセットは速度が低く出て、その日の基準にしづらいです。
レップの深さを一定に。 スクワットの深さやベンチの可動域がレップごとに違うと速度値もぶれます。同じ範囲で行うよう伝えてください。
衝撃直後は少し待ちます。 バーを強く下ろすなど強い衝撃の後は、センサー値が一瞬不安定になることがあります。1〜2秒ほど落ち着く時間を与えれば大丈夫です。
チーム単位で管理する
一人の選手を測るのと、チーム全体を管理するのは別の仕事です。ここでcoach-web(Webダッシュボード)が力を発揮します。
選手別の速度推移:同じ種目の平均速度が時間とともにどう変わったかを広げて見て、基準線に対する上下を追跡します。
チームランキング・ベスト記録:VBTを含む種目別の最高記録を一目にまとめて見ます。選手間の比較や目標設定に使いやすいです。
プログラム割り当て:VBTを含んだ測定・トレーニングプログラムを作って選手に割り当て、定期測定ルーティンとして回すことができます。
現場でアプリで測り、そのデータがcoach-webにチーム単位で整理される流れです。アプリとWebが同じアルゴリズムを共有するので、どこで測っても同じセットに同じ結果が出ます。
アプリとWeb、どちらで測るか
どちらも測定と分析をすべて行えます。違いは能力ではなく状況です。
現場・移動中ならconnectアプリ:スマホさえあればすぐ測れ、ジムで複数の選手を回しながら測定するのに向いています。
チームを体系的に管理するならcoach-web:デスクトップでチーム・権限・プログラムを整理し、溜まった速度データを比較・分析する場所です。Webでもセンサーを接続してライブで測れます(デスクトップChrome・Edge)。
普通はアプリで現場で測り、Webでまとめて見る組み合わせが自然です。
よくある質問
Q. VBTをするには先に1RMを知っておく必要がありますか?
いいえ。速度そのものが強度の指標なので、1RMを知らなくても目標速度区間に合う重量を選んですぐに始められます。むしろ逆に、いくつかの重量で速度を測れば、PoinT GOがその関係で1RMを推定してくれます。重い最大挑戦を頻繁にしなくてよいのでより安全です。
Q. どんな種目に使うとよいですか?
スクワット・ベンチプレス・デッドリフト・オーバーヘッドプレスのようにバーベルを使う複合種目に最もよく合います。ダンベル・ケトルベルは手首に、ケーブル・マシンは重量スタックにセンサーを付けて測定でき、自重種目は胴体に装着します。器具に合った位置に付ければよいのです。
Q. 速度低下は何%でセットを切るべきですか?
トレーニング目的によって変わります。パワーや最大筋力が目的なら疲労が溜まりにくいよう低い線で、筋肥大が目的ならもう少し許容する方です。最初は保守的に取ってセットを終え、慣れてきたら目的に合わせて調整してください。PoinT GOがセット中の速度低下を段階で表示してくれるので、それを見て判断すればよいのです。
Q. レップごとに速度が少しずつ違うのですが大丈夫ですか?
正常です。人間なのでレップごとに少しずつ違います。ですから1レップの値に一喜一憂するより、セットの流れ(平均速度、セット内で速度が落ちる度合い)を見るのが正しいです。値がやけにばらつくなら、最大の意図で押していなかったか、フォームがぶれた合図かもしれません。
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